腕立て伏せは、中長距離(マラソン)ランナーにとって意味があるのか?

腕立てする男性 ランナーの疑問

社会人の市民ランナーのみなさん、どう思いますか?

学生のころ、時代遅れ思考(今となっては)の顧問や監督に回数だけ指定されてバカみたいにやらされた経験がある方も多いはず。
なぜか罰ゲームにも採用されがち。

大人になった今、陸上クラブに通い始めた小学生の頃からの密かな疑問・・・

「腕立て伏せをして腕や胸筋を鍛えることが、長距離ランナーとしての走力の向上、タイムの更新・短縮につながるのか」

を考えていきます。

対象は、陸上の中長距離ランナー&市民マラソンランナー。
定期的に練習に取り入れるべきかという視点で考察。
正しいやり方で連続10~30回はできる想定で話を進めます。

【軽く結論】長距離ランナーとしての走力だけを考えるなら、腕立て伏せは必要ない!

実体験とトップランナーのインタビュー、様々な書籍、WEBサイトの情報を総合して考察すると、

正しく実践する分にはかまわないが、腕立て自体が走力向上につながっているかというと、かなり疑問が残る

という結論にたどり着きます。

その理由を見ていく前に、腕立て伏せの定義を確認しておきましょう。

 

【定義】ここでいう「腕立て伏せ」とは?

腕を一定間隔で開いて床につき、腰の位置を維持したまま、肘を曲げ、胸を床に向けて下げ、また上げるのを1回とする、日本伝統?の自重系の筋力トレーニングを指します。

【参考動画:正しい腕立て伏せのやり方】

↓メトロンさんのフィットネスYouTubeがわかりやすいです。
(※見ての通り、ランナーではない方です)
回数のカウント方法も自分に厳しく、すばらしいですね♪

非常に美しい腕立て伏せの姿勢!
胸筋がえげつないっ

もちろん、ひざは着けません。
腕は肩幅を基本に、狭めたり広げたり、様々。

英語でカッコよく言うと、「プッシュアップ」とも言いますね。
上記動画の通り、顎がつくぐらいまで下げるのが正しいやり方です。

肘だけちょこちょこ曲げるのは間違っています。
(特殊な目的があれば別ですが)

 

腕立て伏せがランナーに必須ではない3つの理由

【1】ガリガリで腕立てができなくても速い人は速いから

中学生・高校生・大学生・社会人で、ある程度、専門的に中長距離をやっていた方ならご存じの通り。

おそらく筋トレなんかまったくしていないであろうチームメイトや他校のライバルに、自分の努力をあざ笑うかのように颯爽と差を広げられた経験がありますよね( ゚Д゚)

ライバルより速くなりたくて、自宅で腕立てに励んだこともあるでしょう。
その結果、ライバルには勝てましたか?
腕立てが推進力を与えてくれましたか?
腕立てが意味あったと感じられましたか?

私も、中学生・高校生のときは、今と違ってスマホがなく(ガラケーとパソコンはありましたが、まだ情報収集する習慣がなかった)、めちゃくちゃに腕立てしたこともあります。
腕立てのパターンもいろいろ試しました。

正直、走力向上に寄与した気はしません!!

 

【2】胸や肩回りに筋肉がつくと腕が重くなる感じが確実にある

腕立て20回×3セットなど、正しいやり方でやると、胸や腕がたくましくなります。
定期的に練習に取り入れ、継続していると筋肉がつきます。

その状態で5~20キロ走ってみると、「うん、腕が振りにくい」となります。
何度も経験があります。
力強さは増す気がしますが、キレがなくなるような。

これはあきらかに自然な腕振りを妨げている気がしてなりません。

これが走力向上につながればいいのですが、筋骨隆々&ガチムチのマラソンランナーがいないことからも腕力は前への推進力につながらないと考えたほうが良いと思えます。

フルの30キロ以降や上り坂で、脚が終わったときに腕振りで体を前に運ぶという考え方もありますが、このときに使う腕振りが通常の腕立てで鍛えられる気もしません。

 

【3】女性の実業団ランナーで腕立てができなくても、速い人はいる

本当に腕立てする筋力がランニングに必要なら、腕立てがほとんどできない細身の女性ランナーが速く走れるわけがないんです。

上記動画のような、正しいやり方だと10回すらできない選手もいますよね。

それでも、走る練習を積み重ねることでトップクラスのレベルまで速くなっている。
「腕力<<<<<体の軽さ<<<練習量」ではないかと思えてなりません。

 

原 晋監督(青山学院大学)も腕立てと腹筋を推奨していない

言動で注目を集め続ける青学の原監督も2016年4月のテレビ番組「林先生が驚く初耳学!」にて下記のように言っています。

長距離に必要なのは脚の運びと腕振り。
腕立てを頑張って肩回りに筋肉がつくと滑らかに腕を振るのが難しくなる。

サッカーやラグビーなどの接触が多い競技は腕立てなどで筋肉をつけないと怪我をしてしまう可能性がある。
しかし、長距離選手は相手との接触がほぼないので腕立てなどでアウターの余分な筋肉をつける必要がない。

また、腹筋も割れるほど鍛えるのも逆効果。

表層の腹直筋を鍛える腹筋では、腹直筋の肥大によって酸素を多く使うことにつながるので長距離走ではマイナスになってしまう。

学生たちに腹直筋を鍛えることをやめるよう指示、以前は6つに割れていた腹筋を鍛えないことで平らな腹筋に戻した結果、タイムに直結した。
学生たちも効果を実感している。

(出典:livedoor NEWS

実際に、数々の駅伝や個人成績で結果を残してきた指導者が言うのは説得力がありますね。

 

青学のコアトレーニング本

確かに青学関連の書籍でも、コア(体幹)トレーニングは推奨されていますが、腕立てなどの古典的なトレーニングは出てきません。

 

また、大迫傑選手(現マラソン日本記録保持者)も、オレゴンナイキプロジェクトでは、

ウエイトトレーニングにしても腕立てや懸垂などの原始的な方法ではなく、メディシンボールやバーベルなどの器具を使って科学的なアプローチでコアトレーニングを行っていたのが新鮮でした。
そういう様々なアプローチのトレーニングを経験して、この環境に身を置きたいと思うようになりました。

(出典:SAKAI Medical Co.,Ltd.

とインタビューで語っています。

 

では、一般の市民ランナーも腕立てはまったくしないほうがいいのか?というと・・・
そこは個人的な考え方になります。

男としての体の見た目を考えると腕立ては有効

シリアスの中でも、本当にシビアに競技力向上をメインにしているランナーでしたら、走力に直結しないことはしないほうが絶対に良いです。当然です。

 

ただし、一般的な市民ランナーの場合は話は別。

楽しむことを優先にしている一般的な市民ランナー(10キロ:33~45分、フル:3時間前後20分ぐらい)の場合、腕立てはアリだと考えています。

なぜなら、見た目がカッコよくなるから。

男たるもの、やはり細身でも、ほど良く胸筋がついた細マッチョのほうが女性受けもイイ!!

 

実際、腕立てほど気軽にできるトレーニングはなかなかありません!
腰の位置を意識してくり返せば、体幹も鍛えられますし、

  • 片脚を浮かしたり
  • 台に脚を上げたり

と複数のやり方でトレーニングすることで負荷も増やせます。

このあたりは個人の考え方次第ですね。

 

【まとめ】腕立て伏せの良し悪しについて

  • 腕立てでつけた筋肉は、ナチュラルな腕振りを妨げる可能性が高い
  • 中長距離、マラソンランナーとしての走力だけを考えるなら、腕立てよりも体幹を鍛えるべき
  • 男としての肉体的な見た目を考えると腕立ては有効

さらに、
★走力は、基本的には走ることでしか向上できない
★腕立て伏せで走行距離(練習量)の少なさをカバーするのは難しい
とも言えます。

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